Classic Memphis Wrestling
 Jerry Lawler vs. Andy Kaufman
 (DVD)
 収録時間:約2時間34分
 さてさて皆様方、ジム・キャリー主演で99年(日本では00年)に公開
された映画『マン・オン・ザ・ムーン』をご覧になった事がおますやろか。
これ、84年に僅か35歳の若さで癌によりこの世を去ったアメリカのコ
メディアン、アンディ・カウフマンの伝記映画でして、ワシの場合は以前
某方よりお勧めしていただいたものの、なかなか観る機会がなくって長
らく放っておいたって代物。けど、ちょっとしたキッカケにより、つい最近
ようやくDVDで鑑賞してみたのですが、ジェリー・“キングさん”・ローラ
ーやジム・ロス(JR)が出ているって表面的な事柄云々より、虚と実の
間にある、実は非常にあやふやな“境界線”に己の芸の立脚点を求め
るってカウフマンの生き様に、非常にプロレス芸との類似点を感じさせ
られましたんや。尚、この映画の後半では、実際に当時米国のお茶の
間を騒がせたカウフマン対“キングさん”の抗争劇にも時間を割いて触
れられており、加えてDVDのボーナス映像として両者の試合映像など
も収められていて、これで手っ取り早く伝説の“アングル”のさわり部分
は視聴可能。ただ、もっともっと別の映像を観てみたいな、なんて思っ
ていたら、少々ハーフ・オフィシャルっぽい作りですが、遂にカウフマン
対“キングさん”の抗争劇の一部始終をブチ込んだと思われるDVDが
リリースされましたデ。さァ、まずは改めて映画『マン・オン・ザ・ムーン』
を鑑賞し、続けて本DVDを鑑賞いたしましょか...。

【追記】ネットの検索欄にアンディ・カウフマンやマン・オン・ザ・ムーンを
投入すると、実に多数のサイトがヒットすると思いますが、カウフマン対
“キングさん”ならば、この『Uncle Andy's Funhouse』さんがお勧めや。
特に“キングさん”との“アングル”に触れたこのページなんて、ちょっと
前までなら立派な“ケーフェイ”破りでっせ。ウン、これは必見や!。

(01)Kaufman Wrestles a Woman
  古今東西、プロレスのチャンピオンなんてのは、ある種“名乗った者
 勝ち”の世界。って事でカウフマンも勝手に“World Inter-Gender Wre
 stling Champion”(直訳するなら世界無性別級王者ってところやろか)
 を設立し、女性相手に賞金を懸けては試合を行っていたんやて。
 ちなみにカウフマンは生涯に通算400戦以上を戦い、只の一度も負
 けた事がないそうや。ウーン、宮本武蔵やヒクソン・グレイシーも驚き
 の猛者やったんですな(苦笑)。あ、ここにはそんなカウフマンの試合
 模様(当然女性相手で、内容は技が云々ってのではなく、限りなく強
 姦まがいの押え込みにて勝利)が収められております。尚、多分別の
 日の収録かと思いますが、マイクを握りリング上から会場の女性達を
 挑発。負けたら坊主になってやる、なんて言っているみたいでっせ。
(02)Lawler Pushes Kaufman
  カウフマンの女性蔑視の態度に、遂に“キングさん”(地元メンフィス
 ではバリバリのベビー・フェイス)が決起。今日も今日とて女性相手に
 カウフマンが勝利を収めたところ、突如“キングさん”がリング上に駆
 け上がりカウフマンに手出し。さぁ、カウフマンと“キングさん”の抗争
 がいよいよこれから始まりまっせ!。
 【追記】あくまでネタとして女性相手にプロレスをやっているカウフマ
 ンと、ナチュラルに女好きの我等が“キングさん”。ならば、どちらが
 女性蔑視であるのかはすぐに分かりそうなものなんやけど、それを
 言ってしもては話にならんからねェ...(苦笑)。
(03)Kaufman Sues Lawler
  カウフマンのプロモ。さすがにエンタテイメントの世界に生きる人だ
 けあり、ここらはお手の物ってところやろか。あ、それとどうやらカウ
 フマンは腕利き弁護士を雇い“キングさん”を訴えようとしとるみたい。
 けど“キングさん”も真っ向から受けて立つ気構えを見せております。
(04)Kaufman Gets Ready For Lawler
  またもやカウフマンのプロモ。どうもカウフマンは“キングさん”との
 一騎討ちを決意したらしく、巨漢の女性をチョーク・アウトして一大デ
 モンストレーション。曰く、「お前もこうしてやる!」ってとこでしょうな。
(05)Andy Kaufman vs. Jerry Lawler
  はいはい、これがカウフマンと“キングさん”の一騎討ち。ちなみに、
 興行会場は“キングさん”のお膝元であるメンフィスのミッドサウス・コ
 ロシアム(大入り袋は出たのやろか、とりあえず“キングさん”の懐は
 それなりに潤ったはず)や。あ、注目の試合ですが、バック・ドロップ
 〜パイル・ドライバーにて“キングさん”がカウフマンを軽く一蹴。哀れ
 カウフマン、担架にて退場ですワ...。
 【追記−@】試合は僅か7分程度。しかも開始から5分以上、両者は
 指一本触れる事がなく(←ずっと、カウフマンが逃げ回っていた)、普
 通なら暴動ものの展開や。けど、そんな展開をお客に納得させられ
 たのは、カウフマンと“キングさん”の懐の深さ、か。ま、そうでもしな
 いとカウフマン相手では正直、さすがの“キングさん”も間を持たせら
 れないやろし、卑怯なヒール(この場合、カウフマン)が逃げ回ってお
 客のヒートを買うってのは、プロレス芸の基本中の基本やからなァ。
 【追記−A】さてさて上記した『Uncle Andy's Funhouse』さんの記事
 によると、“キングさん”の放った豪快なパイル・ドライバーを受けたカ
 ウフマンは頚椎を損傷するってダメージを負い、大きなギプスを付け
 て一週間の入院生活を余儀なくされたそう。ってのは表向きのお話
 で、実は“キングさん”の“プロの技”により、カウフマンはカスリ傷ひ
 とつ負わなかったんやて。ただ、カウフマンもそこは芸人。自身の負
 傷に真実味を持たせ様と、お医者さんに対し「一番大きなギプスを付
 けてんか」、なんて注文。ウンウン、二人の芸人魂に乾杯ですなァ。
(06)Andy Vows to Leave Memphis
  なんとか無事(苦笑)退院したカウフマン、リングの上から満場のお
 客さんを挑発...。 
(07)Kaufman Returns
  どうやらニック・ボックウィンクル伯楽の保持するAWA世界王座に
 挑んだらしい“キングさん”。もうちょっとで念願の王座奪取やったの
 に、伯楽のセコンドに付いたジミー・ハートや、謎の白覆面(包帯?)
 男の介入により煮え湯を飲まされる結果に。しかもその白覆面がな
 んと一度は撃退したはずのカウフマンであって...。
(08)Kaufman & Hart Interview
  カウフマンとジミー・ハートのプロモ。“キングさん”との抗争の第2ラ
 ウンドが華々しく幕開きや。
(09)Lawler & Kaufman Video Package
  カウフマンと“キングさん”のプロモ。そして(05)の試合後に両者揃
 って出演した『David Letterman Show』の模様も。もともと両者はこの
 番組で仲直りをする予定やったそうですが、互いのちょっとした言葉
 や態度が気に障ったらしく、最後は“キングさん”がカウフマンの横っ
 面を張り、カウフマンは放送禁止用語(←鳩の鳴き声で消されている
 のがプリティ・グッド)を連発して応戦...。
 【追記】『Uncle Andy's Funhouse』さんの記事によると、またまた真実
 味を持たせんと、事前にカウフマンは“キングさん”に対して手加減抜
 きで殴ってくれとお願いしたそう。ま、皆さんご存知のように鉄拳攻撃
 は“キングさん”の十八番中の十八番の芸やからね...。
(10)Kaufman Challenges Lawler
  カウフマン、“キングさん”から喰らったパイル・ドライバーの恐怖と
 屈辱の入院生活を振り返り、それでも不退転の決意(苦笑)で“キン
 グさん”に挑戦を表明!。
(11)Andy Kaufman & Colosssus of Death vs. Jerry Lawler
  実に気味の悪い怪覆面“Colosssus of Death”を従えたカウフマン、
 “キングさん”と性懲りもなく対決するのですが、これまた肝心の試合
 は全て“Colosssus of Death”に任せっ切り。で、“キングさん”のフィ
 スト・ドロップ自爆で調子付いたカウフマン。“Colosssus of Death”に
 命じて“キングさん”を羽交い絞めにさせ、憎々しくビンタを飛ばし、調
 子に乗ってジャンピング・ニー・パッドまで放ったものの、“キングさん”
 がこれを咄嗟に回避したものやから...。
(12)Kaufman puts a Bounty out on Lawler
  “キングさん”から右の鉄拳〜スープレックス、ボディ・スラムと殺人
 フル・コースを味あわされたカウフマン。「誰でもエエからアイツを倒し
 てくれ、賞金はタップリと弾むデ!。よっしゃ、5千ドルでどないや!」
 と、腫れ上がった顔面を隠す事もなく爆弾発言を。
(13)Andy Turns on Hart
  何故だか分かりませんが、突如カウフマンとジミー・ハートが口論の
 末に掴み合いのキャット・ファイト(苦笑)。これはリングで決着を付け
 ないとアカンと、後日二人は正々堂々の一騎討ちや。
(14)Kaufman asks for Help
  ジミー・ハートにボコられたカウフマン、額面1万ドルの小切手をチ
 ラつかせて、なんと憎き“キングさん”にジミー・ハート潰しを依頼!
(15)Andy Double Crosses Lawler
  1万ドルの小切手に目が眩んだのか(ま、ここで疑ってしもては話も
 弾まんからね)カウフマンとチームを組み、ジミー・ハート&アサシンと
 戦う事となった“キングさん”。けれど土壇場でカウフマンが“キングさ
 ん”にド汚い裏切りのパウダー攻撃を見舞って...。ウンウン、ここら
 は真に王道のプロレス抗争劇ってところですな。感心感心。
(16)Lawler Burns Kaufman
  してやったりのカウフマン。“キングさん”から奪ったのか、ド厚かま
 しくも“キングさん”のトレード・マークの王冠を被り、「やァやァ、我こ
 そは新しきプロレス界のキングなり」と挑発開始。しかしやられたら、
 その10倍にしてやり返すのがこの世界の掟。って事でアサシンズの
 試合に乱入した“キングさん”、セコンドに付いていたカウフマンの顔
 面目掛けて衝撃の火炎放射攻撃を決行!。
(17)Helpful Hints
  顔面に火傷を負ったカウフマンのプロモ。でも口はまだ達者な様子
 でして、安全剃刀や液体歯磨きの使い方を教えてあげると、“キング
 さん”ら南部の人達を丸で未開の地の住人のように挑発。
(18)Phone Interviews with Andy
  それでも喋り足りないカウフマン。電話口であれこれグチャグチャと
 愚痴っていると“キングさん”が現れ、両者は電話で口喧嘩(見事にプ
 ロレスになってますな。ウーン、ヒアリングが出来たならここらはもっと
 もっと楽しめるんやろなァ)。あ、どうやら次の対戦のキー・ワードはボ
 クシング。かのモハメド・アリの様に“キングさん”をブッ倒してやるって
 事みたいや。で、迎え撃つ“キングさん”の近況なんですが、ジェシー
 ・ベンチュラ(後にミネソタ州の知事に)のセコな姦計によって南部王
 者の座から滑り落ちるなどと、どうにもエンジンが掛からぬ様子。スタ
 ジオ・マッチでジミー・ハートを追い回すのが精一杯ですワ...。
(19)Conbination-Boxing/Wrestling Handicap Match
 “Fist or Twist”、“ボクシングか、レスリングか”。昔からホンマに強い
 のはどっちであるのか、なんて延々議論されて来たものですが、とり
 あえずどっちが強いのかは分からなくとも、この両者がコンビを組んだ
 ならそらもうこれは怖い物なし。って事でレスラー代表のジミー・ハート
 を従えボクシング・グローブを装着したカウフマンが“キングさん”と2
 対1のハンディ戦にて激突。で、試合の方なんですが、さすがに自分
 から言い出したくらいやから自信もあったのやろね、カウフマンはモハ
 メド・アリの如く蝶の様に華麗に舞い、蜂の様に刺すんですワ(←あ、
 勿論嘘やデ)。で、ジミー・ハートのパウダー攻撃が誤爆し、一瞬カフ
 マンも窮地に陥ったものの、最後はダーティ過ぎる凶器使用パンチを
 “キングさん”の顔面にメリ込ませての激勝や!。
(20)Andy Interview
  (09)で触れた『David Letterman Show』のパロディやろかね、『Jerr
 y Lawler Show』なるものを催した“キングさん”。勿論今宵のゲスト(モ
 ニター画面の中の)はカウフマンで、最後の決戦に向けいよいよ緊張
 感も高まって来ましたデ(苦笑)。
(21)Jerry Lawler vs. Andy Kaufman 2
  で、これが両者の二度目の一騎討ち。内容は昭和の臭いが漂う異
 種格闘技でして、カウフマンはボクシング・グローブを装着や。ただ、
 またもや試合の前置きが異様に長い...(苦笑)。ロープをまたぐか
 と思えばリング下に飛び降り、モハメド・アリ張りのステップを踏んでは
 客席のお客を憎々しく挑発してみせるカフウマン。けど、これだけであ
 の時間を持たせてしまうんやから、ある意味立派やし、やっぱり凄い。
 尚、やっとの思いで絡んだ二人でしたが、瞬きする間もなく(←ちょっ
 と大袈裟)カウフマンは“キングさん”に一蹴されてしもて...(苦笑)。
 
 【感想】ウンウン、こっちの期待以上に楽しめるDVDやったワ。尚、ワ
 シの筆力がないから、このレビューだけを読まれると、何やらカウフマ
 ンって人はプロレス芸を小馬鹿にしているかの様に思えてしまうかも
 知れまへんが、決してそんな事はおまへんデ。いやそれどころか、同
 じエンタテイメントの世界に生きる芸人として、カウフマンが最大限プ
 ロレス芸を理解し、愛し、リスペクトしているのが手に取るように伝わ
 って来ましたモン。実際、最近我が国でも行われている所謂“エンタメ
 ・プロレス”に感じる“やらされている感”ってのがこれっぽっちもなか
 ったからね。あ、それと(21)の試合の後日談的な映像はなかったの
 でしょうか。もしもあったのなら、是非それも入れて欲しかったですワ。

【特典映像】
  ビル・アプター(プロレスリング・イラストレーテッド誌編集長)、ジミー
 ・ハート、ランス・ラッセル(多分、当時の実況者)、“キングさん”の直
 近の短編インタビュー。ただし、今回の抗争劇の一方の雄であるアン
 ディ・カウフマンだけは残念ながら未収録......(合掌)。
 あ、それから更なるオマケの試合映像として、“キングさん”の首に懸
 かった5千ドルを狙ってケン・パテラが名乗りを上げるシーン(その試
 合も観たかったなァ)、“キングさん”とバディ・ランデル(←後のニセ・
 フレアー)の一騎討ちもあり。ゲストとして実況席に座ったカウフマン
 の舌芸を心行くまで堪能してや!。


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