NWA World Heavyweight Title Tournament
 Nov 19rd 1994 - Cherry Hill, NJ
 (VHS-Tape)
 収録時間:約2時間37分
 本作はDVDではなくって、VHSテープ。米国の『RF-Video』ってちょっ
と怪しいプロレス・グッズの通販屋から送料別で1本12ドル(今回は定
例の週末セールに合わせてオーダーしたので、3割引の8.4ドルやっ
た)で発売されている代物です。さてその収録内容ですが、ニュー・ジャ
ージー地区でプロモーター業をやっていたデニス・コラルッツォ氏が、旧
NWA役員達の許可を得て(多少の銭を出して?)復興させたNWA世
界王座のベルト。その“伝説”のベルトを懸け、8名の猛者を集め1994
年11月19日にニュー・ジャージーのチェリー・ヒルってところで開催した
『NWA王座争奪トーナメント』の模様を収録したものなんや
 で、ここまで書くとピンと来られる方も居られると思いますが、実はこの
年の8月27日、コラルッツォ氏は当時NWA傘下にあったECW【Easte
rn Championship Wrestling】に声を掛け、『NWA王座争奪トーナメント』
を合同開催(?)したんです。けどここで策士ポール・Eが暗躍(苦笑)。
トーナメントを制し“伝説”のベルトを手にしたシェーン・ダグラスに、歴代
NWA王者達の名を挙げて、「俺の尻にキスでもしやがれ。(NWAって)
組織は7年前に崩壊している。」、とアジテーションをさせた上で、『金看
板』であるはずのNWA世界王座のベルトをポイっとその場に投げ捨て
させ、続けて取り出したECW認定の世界王座のベルトを頭上に大きく
掲げて、「ECWの時代が到来だ!」と叫ばしよったんですワ。これを契
機にECWは【Extreme Championship Wrestling】と名称変更。NWA傘
下からも抜け、ポール・Eのプロレス頭脳をフル活用し、大きく躍進して
行く事となるんです。さてさて、これでECW側はしてやったりとなって万
々歳なんですが、ファンの前でトコトンまでコケにされたコラルッツォ氏は
黙ってなんておられまへん。ダグラス(と、ポール・E)によって投げ捨て
られた“伝説”のベルトを拾い上げ、再び今回の『NWA王座争奪トーナ
メント』を企画しよったんです。さぁ前置きも長くなりましたが、歴史の波
に翻弄される“伝説”のベルトの行方は?!。期待に胸を膨らませつつ、
ビデオ・テープを再生してみましょう。
【追記@】収録されている映像なんですが、多分主催者に断りを入れて
 関係者の誰かが花道奥から固定カメラを使って収録したものみたい。
 画面の真ん中にコーナー・ポストが映り、しかもTVカメラを肩にした正
 規のカメラ・マンがずっとそのコーナー・ポスト横に立ってリングの中を
 撮影しているため、コイツが邪魔で見辛い事見辛い事...。どうせや
 ったら、あのTVカメラで収録された映像が観たかったなァ。
【追記A】さっき、歴史の波に翻弄される“伝説”のベルトと書いたけど、
 このベルトは正に歴史の波に翻弄されて、後に小川直也や故橋本真
 也の腰にも巻かれる事となり、現在はTNAが管理しているそうです。
【追記B】今回の“仕切り直し”トーナメントなんですが、どうも興行に参
 加している顔触れを見ると、SMW【Smorky Mountain Wrestling】から
 かなりの協力を得ているみたい。けど内心コラルッツォ氏はビクビクし
 ていたんやないやろか。トーナメントを制したレスラーが再び“伝説”の
 ベルトをポイ捨てし、何処からか取り出したSMWのベルトを大きく掲
 げて、「これからはSMWの時代だ!」、なんて言い出すんやないかっ
 てね(苦笑)。
 
○コラルッツォ氏のご挨拶
  “伝説”のベルトを手にして、コラルッツォ氏がお客さんにご挨拶。
@NWA World Heavyweight Title Tournament : 1st Round #1
 Tracey Smothers vs. "Dangerous"Devon Storm
  共にこの後、ECWマットに草鞋を脱ぐ事となるスマザーズとストーム
 の一騎討ちにてトーナメントの予選第1試合は開始。マイクを握って悪
 態を付くストームに対し、呑気なカントリー・ロック(これがまたこの人の
 芸風にピッタリ)に乗って現れたスマザーズ、コーナー頂部からのショ
 ルダー・アタック1発でストームを沈めよりました。
ANWA World Heavyweight Title Tournament : 1st Round #2
 "Hot Stuff"Eddie Gilbert vs. Johnny Gun
  ポール・Eが本格的に采配を振るい始めたためか、団体設立当初は
 ブッカー職にあったエディ・ギルバートもECWからフェード・アウト。で、
 コラルッツォ氏から声が掛かり(?)、今宵の『NWA王座争奪トーナメ
 ント』に参戦や。さぞ控え室ではポール・Eの悪口で盛り上がった事や
 ろね(苦笑)。さて試合ですが、ギルバートがいきなり場外戦を仕掛け
 て始まるのですが、固定カメラの悲しさで全く映像が選手達に付いて
 行ってまへん。そして両者がやっとこさでリングに戻った途端、ギルバ
 ートのロープ悪用フォールが火を噴いて...。 
BNWA World Heavyweight Title Tournament : 1st Round #3
 Chris Candido (w/Sunny) vs. Al Snow
  予選第3試合はなかなかの好勝負となりました。カードはサニーちゃ
 んを引き連れたキャンディードが、アル・スノーと激突するってものや。
 投・蹴・極と三拍子揃えてキャンディードに襲い掛かるアル。対するキ
 ャンディードもアルの仕掛けに容易く迎合する事なく、“らしさ”を随所
 に散りばめた闘い振りで応戦。十八番のダイヴィング・ヘッドが自爆と
 なった時はキャンディードの命運も尽きたかと思いましたが、そこから
 なんとか体勢を立て直し、アルの繰り出したパワー・ボムを絶妙のタイ
 ミングで切り崩して丸め込み、薄氷の勝利をゲット。試合後、悪びれる
 ところもなく、キャンディードを讃えるアル。ニコリとこれに応えるキャン
 ディード。ウン、これはグッド・マッチでしたな!
CNWA World Heavyweight Title Tournament : 1st Round #4
 Jerry Lawler (w/Jim Cornette)
 vs. Dirty White Boy
  王冠とガウンで正装し、ゆっくりとゆっくりとエプロン・サイドにお出ま
 しとなったのは、“南部の帝王”ジェリー・ローラー。そう、あのキング
 さんが『NWA王座争奪トーナメント』に参戦ですワ。ウーン、キングさ
 んと言えばAWA色が強い様に思うんやけど、こうして(全盛期の頃と
 比べると価値は激減したけど)NWA王座を争うトーナメントに顔を出
 すとはねェ。ま、ここらはキングさんのセコンドに付いたジム・コネルッ
 トの尽力でもあるんやろな。で、キングさんの試合振りなんやけど、こ
 れが徹底した省力攻撃と省力受けに終始。ただし、それでもコルネッ
 トと2人してアレコレとネタを出し、ずっとお客をヒートさせ続けるんや
 から、見ているこちらとしてはもう脱帽するしかおまへん。そして事前
 に依頼された“持ち時間”も一杯となったんでしょうな。最後はコルネ
 ットを試合に堂々介入させて覚悟の反則負け...。いやはやBに続
 いて、またもエエものを見せて貰った。キングさん、コルネットさん、お
 疲れ様。十二分にアンタらの名人芸を堪能させていただきましたデ。
DOsamu Nishimura vs. "Lighting"Lou Perez
  トーナメント絡みの予選4試合も滞りなく(?)終わり、ここからの3試
 合はトーナメントとは別枠仕立て。で、なんでもNWAフロリダの王者ら
 しいペレス相手に戦うは、我が日本国代表の西村“無我”修。黒のショ
 ート・タイツに裸足ってスタイルの西村、師匠のドラゴン藤波が見たら
 卒倒するであろう(苦笑)、場外戦でのパイプ椅子攻撃などを適時盛り
 込み、規定の13分を戦い終えてのドローを好演ですワ。
EThe Inferno Kid vs. Mr. Motion
  多分若手〜中堅同士の一騎討ちなんでしょうが、特にモーションに
 ミス・ムーヴが散見された本試合は、僅かな時間でインフェルノ・キッド
 (正体はDanny Gimondoって人で、後にWWFでちょこっとだけやけど
 ジョバーさんにもなったみたい)が強引に幕を降ろしてしまいました。
FScotty Flamingo vs. Doink
  前述したポール・Eの謀略が大爆発の第1回目の『NWA王座争奪
 トーナメント』では、シェーン・ダグラスの勝利に大いに貢献したドイン
 クが登場。あれ、こいつもコラルッツォ氏からすると招かざる客ではな
 いのやろか(それともピエロの化粧をしとるから分からんけど、その正
 体は前回のマット・ボーン/ボーン・アゲインやないのやろか?)。ま、
 ドインクの正体についてはここまでとして、やっぱりここで大いに突っ
 込みを入れたいのは、派手な蛍光色のコスチュームで現れたスコッテ
 ィ・フラミンゴ。そう、後に革ジャンとネル・シャツでバッチリと決め、“失
 われた世代”の旗手を気取るレイヴェンその人ですワ。いやはや、そ
 れにしてもこうして売れなかった頃の映像が大量に私蔵されてしまう
 んやから、レスラーって仕事も気が抜けまへんな(笑)。あ、肝心の試
 合の方なんですが、スコッテイの女子マネも絡む、コメディ・マッチ(←
 誤解せんとていや。コメディ・マッチ自体が悪いとか、程度が低いとか
 言ってる訳やないから)と言っても過言ではない内容でして、それでも
 十八番のDDT(いくらギミック・チェンジしても、これだけしかやれんの
 はだけは変わらんね)でフラミンゴがドインクを撃ち破っております。
GNWA World Heavyweight Title Tournament : Semi Finals
 Eddie Gilbert vs. Tracey Smothers
  ここからが『NWA王座争奪トーナメント』の準決勝戦。その第1試合
 では、またまたエディ・ギルバートがいきなり場外戦を仕掛ける大暴走
 でっせ。けどこれまた固定カメラが選手を追い切れず、我が家のモニタ
 ー画面には、延々無人となったリングが映っているだけ(涙)。最後は
 リングに両選手が戻り、ギルバートの放ったバック・ドロップ・フォール
 ドにカウント3が。でも、メイン・レフェリー(ちなみに不運な失神スポット
 から目が覚めたばかりって設定)は技を仕掛けたギルバートの勝ちと
 したものの、意識がはっきりしていたサブ・レフェリーは、技を仕掛けた
 ギルバートの両肩がリングに付いていたと、スマザーズの勝ちを宣告。
 そしてこのサブ・レフェリーの宣告がすんなり通り...。ウーン、これっ
 て多分ギルバートの書いた“シナリオ”なんやろけど、レフェリー2人の
 やりとりにもうちょっとだけ説得力があったら、もっともっと楽しめたの
 にね。特に複雑なネタでもないと思うけど、プロレスって芸事はホンマ
 に難しいんですなァ......。
HNWA World Heavyweight Title Tournament : Semi Finals
 Chris Candido (w/Sunny) vs. Dirty White Boy
  Cでは触れませんでしたが、実は反則負けとなった事が納得出来な
 いと、コルネットと2人してキングさんはホワイト・ボーイを試合後執拗
 にボコったんです。なので折角の準決勝戦やのに、ホワイト・ボーイは
 左膝に包帯を巻き、足を引き摺りもってのファイト。しかしこれではキャ
 ンディードの敵やおまへんな。キャンディードの理詰めの左膝集中攻
 撃に、呆気なくホワイト・ボーイは散ってしまいましたとさ。
IR & R Express vs. Gangstas (w/D-Lo Brown)
  『RF-Video』の商品紹介欄にて本ビデオの収録カードを見た時、トー
 ナメント以上にワシの購入意欲をかき立てたのが本試合。なんとSM
 Wで絶賛抗争中のRR特急vs.ギャングスターズによる遺恨戦がニュー
 ・ジャージーはチェリー・ヒルまでデリバリーでっせ!。RR側が先にリ
 ングに上がり、続いてNFLのオークランド・レイダースのベンチ・コート
 を着用し、ゴロツキ度満点で臨戦態勢を整えたギャングスターズもリン
 グへ。よっしゃ、これは盛り上がりそうや、なんて思ったら、モニター画
 面の中がいきなり残念な事態へと突入。そう、両軍の激突に興奮した
 のか、カメラの真正面に座っている白人の子供達がパイプ椅子の上
 に立ち、これに負けてはならぬと、体格の良い3人組の黒人達までが
 スタンダップ!。あぁ、こないなってしもてはもゥ何も見えまへん...。
 クソッたれ、観戦マナーの悪いお客の背中をビデオで見るためにワシ
 は銭を出したんやないデ(怒&涙)。あ、けど会場で観戦態度が悪い
 のはワシも一緒。ウーン、次回の生観戦からは、もうちょっとだけマナ
 ーを良くしよっと。※本試合の結果ですが、どうやらギャングスターズ
 側の反則負け、もしくは無効試合となったみたいです。   
JNWA World Heavyweight Title Tournament : Final
 Chris Candido (w/Sunny) vs. Tracey Smothers
  って事で始まったのが、キャンディードとスマザーズによる“仕切り直
 し”の『NWA王座争奪トーナメント』決勝戦。けど、Iよりはマシになっ
 たものの、まだモニター画面の中では白人のガキと黒人のお兄ちゃん
 が幅を利かせており、見辛い事に変わりはおまへん。それでもキャン
 ディードとスマザーズは互いの持ち味である曲者振り(インサイド・ワー
 ク)を活かし、山あり谷ありの見所いっぱいの熱戦を構築。正直、最初
 はこの2人で仮にもNWAと名の付く世界王座のベルトを奪い合ってエ
 エものなんかいな、なんて思ったワシやけど、安易にラフ・ファイトや流
 血戦に走るのではなく、じっくりとじっくりとオールド・スクール・スタイル
 の試合を熟成させて行く2人を見ている内に、この2人で良かった、な
 んて思わされるまで至って。最後は愛妻サニーの介入を起点に、スマ
 ザーズを上手く丸め込んでキャンディードが歓喜のベルト奪取。コラル
 ッツォ氏は心配していた(?)でしょうが、新王者となったキャンディー
 ドはシェーン・ダグラスのように“伝説”のベルトをポイ捨てなどをするど
 ころか、ベルトをサニーに持たせ、そのサニーを肩に担ぎ上げて素直
 に大喜び。ウンウン、やっぱり最後はこうでなくっちゃね。良かったね、
 キャンディード。良かったね、コラルッツォさん(苦笑)。
 【補記】こうしてハッピー・エンドで終わった、“仕切り直し”の『NWA王
 座争奪トーナメント』ですが、ここからTNAがベルトの管理を始める20
 02年の6月までを、米国のプロレス・ファンは『The Dead Era』と呼ぶ
 そうで。そう、小川直也や故橋本真也、ダン・スバーン(NWA王者とし
 てターザン後藤と川崎球場でタイトル戦をやりましたな)らが歴代王者
 として名を連ねる、“あの時代”の事ですワ...。


トップへ
戻る