Heatwave 1994
 The Battle For The Future
 South Philadelphia, PA - ECW Arena 1994-7-16
 (VHS-Tape)
 収録時間:約2時間2分
 本作はDVDではなくって、VHSテープ。米国の『Rf-Video』ってちょっ
と怪しいプロレス・グッズの通販屋から1本12ドル(今回は定例の週末
セールに合わせてオーダーしたので2割引の9.6ドルやった)で発売さ
れている代物(著作権を無視した海賊コピー・テープ)です。で、その収
録内容はと言うと、まだECWが【Extreme Championship Wrestling】で
はなく、【Eastern Championship Wrestling】の略であった時代、1994
年7月16日にフィラデルフィアのECWアリーナにて開催された定期興
行『Heatwave 1994』の全容を納めたもの。さてさて『The Battle For T
he Future : 輝ける未来へ向けた戦い』との副題の付いた本定期興行、
早速テープをビデオ・デッキにブチ込んで再生ボタンを押してみましょ。

@The Bad Breed (Axl Rotten & Ian Rotten) vs.
 Rockin' Rebel & Hack Meyers
  今宵のオープニング・マッチはアクセル&イアンによる暴れん坊ユニ
 ット『劣性品種交配軍』と、ハック・マイヤーズ(ハード・ゲイ風のコスチ
 ュームが素敵!)&ロッキン・レベル(後年、初期CZWで胡散臭い役
 所を好演する事に)の激突。ただカードだけ見ると、いきなり『劣性品
 種交配軍』十八番の血生臭い展開でマイヤーズ&レベルがボコボコ
 にされよるんかと思ったのやけど、これがそうでもありまへん。両チー
 ムともお客に向けた細かなくすぐりネタを随所に配し、タッグ戦におけ
 る定番ムーヴを披露。凶器攻撃も流血スポットもなく、代わりにイアン
 による飛距離の全く足りないドロップ・キックなんて苦笑ものの珍品が
 あって、一進一退の攻防はイアンによるダブル・アーム式のDDT〜飛
 び付き式のブルドッキング・ヘッドロックによってマイヤーズが轟沈や。
 そうそう、試合後にはマイヤーズとレベルの仲間割れもありましたデ。
 【追記】
  ロッキン・レベルについてですが、選手紹介の際に彼の名前には枕
 詞として“アヤトーラ・オブ・ロックン・ローラー”ってのがあって。おや、
 これと酷似した“アヤトーラ・オブ・ロックン・ロール”ってのをWWF(当
 時)転出後のクリス・ジェリコが名乗りますやんか。ワシ、あれはジェリ
 コ一流の言葉遊びかと思っていたんやけど、まさかロッキン・レベルが
 一足先に使用していたとはね。些細な事やけど、ちょっとビックリや。  
AECW TV Championship :
 Mikey Whipwreck vs. Chad Austin (w/Jason)
  マイキー君の保持するTV王座に挑むは曲者のチャド・オースチン。
 加えて試合前、突如チャドのマネに『地球上で一番セクシーな両刀使
 い』を自認するジェイソンが付いたものやから、いよいよマイキー君の
 TV王座は風前の灯火。ま、地味な2人の顔合わせではお客も退屈や
 ろうから、リング上の彩り不足解消にとジェイソンが投入されたんやろ。
 さて試合ですが、マイキー君も奮闘はするもののジェイソンの的確な介
 入もあって、どうにもペースを掴む事が出来ず、最後はチャドによって
 クリーン・フォールを奪われ、無念のTV王座陥落に...。けど、どうや
 ら試合中にチャドが御法度のブラス・ナックル攻撃を仕掛けたらしく、一
 度はTV王座のベルトはチャドに渡ったものの、最後の最後はやはりベ
 ルトがマイキー君の手に戻るってベタベタな幕引きや。ま、ひとまずは
 助かったね、マイキー君。
 【重要情報】
  ワシとこのHPによく遊びに来て下さる『王流』さんから貴重な情報を
 いただきましたので、ここに転載させていただきます。尚、『王流』さん
 は当時米国にお住まいであったそうで、ECWも何度も生観戦されて
 いるってなんとも羨ましい経験をお持ちのお方。当然現地で生でご覧
 にならないと分からぬネタも多数お持ちの様でっせ。
 ↓↓
 この頃、マイキーとジェイソンは抗争中でした。しかも、前週のハードコ
 アTVでチャドはロッキン・レベル相手に負け(チャドは当時のTVマッチ
 のメインでフランチャイズやサブゥーとやるくらいの期待の若手の一人
 だった)ジェイソンにマネージャーについてもらっていました。
 そして、翌月の『HARDCORE HEAVEN』でのマイキー対ジェイソンの一
 騎討ちとなります。
BECW Challenge Match :
 Tommy Dreamer vs. Stevie Richards (w/Angel)
  髪型から、サングラスから、ファイト・スタイルの端々から、ショーン・
 マイケルズが好きで好きで仕方がないって感じのスティーヴィ・リチャ
 ード君の、これが多分ECWでの正式なソロ・デビュー戦のはず。ドリ
 ーマーを相手に、エンジェル嬢の手助けをアクセントとして果敢に挑む
 も、やはりここはドリーマーが一歩も二歩も上手。チョーク気味に締め
 上げられて、スティーヴィ君はだらしなく昇天してしまいましたワ。 
 【追記】
  本試合をリチャード君のソロ・デビュー戦と書きましたが、誤解を与え
 ると申し訳ないので以下を追記します。リチャード君は6月26のECW
 アリーナ大会(←『Hostile City Showdown 1994』の2日後)にてハック・
 マイヤーズと組み、テリー&ドリーの『荒馬兄弟』と戦ったとの記録があ
 ります。ただ、その試合はタッグ戦なので、ワシは本試合を“ソロ・デビ
 ュー戦”と位置付けたんです。ゴメン、言い訳がましいね(反省)。
CMr, Hughes (w/Shane Douglas)
 vs. Tommy Dreamer
  駆け出し小僧のスティーヴィ君を下し気勢を上げるドリーマー。止せ
 ばエエのにマイクを握ってシェーン・ダグラスとサブゥ(←両人はセミで
 世界王座戦が組まれている)を挑発。と、ここで憎々しげな笑みを湛え
 てダグラスがミスター・ヒューズを従え花道に御出馬。ダグラスの命を
 受けたヒューズがドリーマーに飛び掛り、ここに予定にはなかった(?)
 番外戦が華々しく幕開けや。試合はヒューズの繰り出すパワー殺法と
 ダグラスの悪辣な介入でドリーマーがとことん痛め付けられて幕となる
 んやけど、リングの上にふてぶてしく上がったダグラスさん、ステーヴ
 ィ君のマネであったエンジェル嬢を言葉巧みに我が物として、やおらマ
 イクを握ぎりリック・フレアー、ハルク・ホーガン、ブレット・ハートの名を
 上げ、「いやいや、このワシこそがレスリング業界の輝ける未来や!」
 とのアジテーションを強行。この約一ヵ月後、1994年8月27日開催
 の『NWA王座争奪トーナメント』ではアメ・プロ史上に燦然と輝く一大
 アジテーションを行う事となる“御本家”シェーン・ダグラスさんですが、
 これはその前段ってところですかな。 
DThe Pitbulls (w/Jason)
 vs. The Tazmaniac & The Mystery Partner
  猛犬使いのジェイソンによってリング上に連れて来られたのは、なん
 とも獰猛そうなピットブルズの面々。さてこの猛犬どもを相手に、今宵
 戦う事となったのはまだ原人ギミックの名残を残すタズマニアック(現
 タズ)。またタズマニアックの相方ってのが『ミステリー・パトーナー』
 て設定でして、いちいち期待を持たせてくれる仕掛けとなっとります。
 試合はやはり多勢に無勢で、タズマニアックがピットブルズの集中攻
 撃を受けて虫の息。何時まで待っても現れぬ『ミステリー・パトーナー』
 に苛立ったのか、控え室からはタズマニアックを救えとマイヤーズらも
 緊急出撃するものの、花道にはドカリとミスター・ヒューズ、ロッキン・レ
 ベル、チャド・オースチンが陣取り、ここから先には誰も踏み込ませぬ
 と強固な人間バリケードを構築。ヒューズとは犬猿の仲である“紛争
 処理係”の911も現れるものの、やっぱりこの人の馬鹿力だけでは揉
 め事など治まるはずもなく、あぁ今宵がタズマニアックの命日となるの
 かと誰もが目を塞いだ(苦笑)その時、遂に待ってましたの『ミステリー
 ・パトーナー』、サブゥが登場。一瞬、タズマニアックとの間に不協和音
 が流れそうになったものの、サブゥはキチンとタズマニアックの援護を
 成し遂げ、これで頭数的にも2対2となって互角以上の戦いが出来る
 と、俄然タズマニアックも奮起。切れ味鋭いジャーマン一発でピットブル
 1号を完全に粉砕してしまいましたワ。
EDueling Canes Match :
 The Sandman (w/Woman)
 vs. "Ironman"Tommy Cairo (w/Miss Peaches)
  公認凶器である竹刀を両者が振り上げ、ただただ相手の頭部や背
 中に力の限り振り下ろすって内容の、単純ながら非常に残酷な一戦
 特に試合の序盤にて自らTシャツを脱ぎ、上半身裸となったサンドマン
 などはカイロの竹刀攻撃を背中や腕に受ける度に皮膚が裂け、全身
 ドス黒いミミズ腫れ状態に。それでもサンドマン、カイロのマネに付い
 たピーチス嬢の介入ミスにつけ込み、カイロ(ブレード・ジョヴあり)を撲
 殺してしまいよりましたワ。
FECW World Heavyweight Championship :
 The Battle For The Future !
 "The Franchise"Shane Douglas (w/Mr, Hughes & Angel)
 vs. Sabu (w/Paul E.Dangerously & 911)
  前記した様に『The Battle For The Future : 輝ける未来へ向けた戦
 い』との副題が冠せられた今宵の定期興行『Heatwave 1994』ですが、
 これはダグラスの保持する世界王座を巡る本タイトル戦の副題でもあ
 って、加えてCでのダグラスのアジテーションからも分かる様に、言わ
 ばこの試合こそが今宵の定期興行の押しも押されもせぬメイン・テー
 マ。ジョーイ・スタイルス氏の実況によると、どうもダグラスとサブゥの
 どちらが“輝けるレスリング業界の未来”なのかを決めようやないかっ
 てとこみたいや。さてその注目の一戦ですが、サブゥに先手を打ちC
 で自身を“輝けるレスリング業界の未来”と讃えてみたものの、何処を
 どう見ても歴代NWA王者達の芸風をキチンと今に継承する“ダーティ
 ・チャンプ”のダグラスと、次の瞬間の行動が全く読めない、丸で“気紛
 れな猫”の様なサブゥとの顔合わせとあって、正直手が合わぬかと案
 じもしたものの、ここはダグラスが懐の深さで予想以上の長丁場とな
 った試合全般をコントロール。全く表現手段の異なる両者が時に融合
 し合い、時に反発し合って試合を構築して行くところを見ていると、なる
 ほどこれぞ『The Battle For The Future : 輝ける未来へ向けた戦い』
 かと思わされもしました。ただ終始ダグラスに押されていたサブゥが、
 起死回生にと放った場外へ向けての月面水爆ダイヴ(直前に突如客
 電が落ちるアクシデントあり)が自爆となって、結局これが原因でサブ
 ゥはカウント・アウト負けを宣告されますんや...。ウーン、この結末
 が『予め用意されていたもの』なのか、それともこれは予期せぬ事態
 であって、本当は『別の結末が用意されていた』のかワシには分かり
 ませんが、折角の大熱戦の結末がこれかいな、って感じでお客達が
 呆気にとられた途端、両軍セコンド陣が総出でドタバタ劇をおっ始め、
 お客達の意識を上手にすり替えてしもて...。ただし、このドタバタ劇
 についても、セコンド陣の咄嗟の判断による抜群の『善後処理』であっ
 たとも、いやいやこれさえも試合と一体で『予め用意されていたもの』
 とも、どちらでもとれるしなァ...。以上、グッド・マッチであったって事
 に嘘偽りは微塵もないものの、それを上回って舞台裏(結局、今回の
 抗争アングルはブチ切れとなってお終い⇒以降、不思議と両者間では
 大きな抗争アングルは組まれず)が気になる、今宵の“輝けるレスリン
 グ業界の未来”決定戦でした。
 【重要情報】
  ワシとこのHPによく遊びに来て下さる『王流』さんから貴重な情報を
 いただきましたので、ここに転載させていただきます。尚、『王流』さん
 は当時米国にお住まいであったそうで、ECWも何度も生観戦されて
 いるってなんとも羨ましい経験をお持ちのお方。当然現地で生でご覧
 にならないと分からぬネタも多数お持ちの様でっせ。
 ↓↓
 結末に関してですが、これはこう決まっていたのではないかと考えま
 す。というのも、サブゥーはこの後、FMW遠征が決まっていたにもか
 かわらず、翌週のファーマーズ・マーケット大会(7月22日)での再戦
 がハードコアTVで宣伝されていました。自分はこのファーマーズマー
 ケットの試合も行っているのですが、フランチャイズはリング上からサ
 ブゥーは怪我で出てこれない(本当は日本遠征中)。10カウント以内
 にこなければ、俺の不戦勝だ、って感じでアピールを行い、9カウント
 で飛び込んできたタズマニアックとの防衛戦という流れでした。このこ
 とからも、自分はアングルだったと思っています。
GNo Roped Barbed Wire Match :
 Public Enemy (Johnny Grunge & Rocco Rock)
 vs. Dory Funk Jr & Terry Funk
  6月24日の定期興行『Hostile City Showdown 1994』での激突が無
 効試合となり、いよいよ遺恨の深まって来たパブリック・エネミーとドリ
 ー&テリーの『荒馬兄弟』。ならばと今宵組まれたのが、実況のジョー
 イ・スタイルス氏が解説するところの、『FMWスタイルの有刺鉄線マッ
 チ』や!。けど、こうして米国マット界でこんな語句が普通に使われて
 いたと知り、改めてあの頃って日本国と米国との間で、健全なキャッチ
 ・ボールが行われていたんやな、なんて感慨に浸ってしまいましたな。
 さて試合ですが、両軍ともTシャツ&長袖シャツの重ね着、Gパン等厚
 手のスボン(勿論こちらも重ね穿き)の着用、手袋やバンテージなどで
 手を保護と、完全防護での参戦。口汚い日本国のデス・マッチ・マニア
 (←誰の事?)なら野次のひとつも飛ばすところでしょうが、それでもド
 リーのスープレックスとテリーのパイル・ドライバーの同時共演など、マ
 ニア連中の琴線をいちいち刺激する場面が多数あり、テリーに煽られ
 たお客達がパイプ椅子をガンガンとリングに投げ込むなんてカオス状
 態を経て、最後はゴミ箱を抱かされたままテリーが有刺鉄線でグルグ
 ル巻きにされて(←テリーのチャームが大爆発する最大の見せ場でっ
 せ!)、ジョニー・グランジ&ロッコー・ロックに2人掛かりで無理やりフ
 ォールを奪われて...。いやはやここまでやってくれるなら、もうお腹
 は一杯。勝敗なんて、ましてや試合に臨む井出達なんて問題外で満
 腹満腹大満足。しかし一度芸人魂に火が点いたテリー御大、こんなも
 のでは許してくれまへんデ。ドリーと手を取り怒りの大逆襲でジョニー・
 グランジ&ロッコー・ロックを完全KOに追い込み、2度と立ち上がれぬ
 ように土葬ならぬパイプ椅子葬にしてしまえと、またまたお客を煽動し
 てパイプ椅子をリングの中へ投げ込ませ...。哀れ、ジョニー・グラン
 ジ&ロッコー・ロックはテンコ盛りのパイプ椅子の下敷きとなって、静か
 に静かに息絶えてしまいました。


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